持病があって通院していたり、過去に大きな病気をした経験があったりして、住宅ローンの団体信用生命保険に加入できるか不安を抱えてはいませんか?

多くの金融機関では、団信に加入できないと住宅ローンの融資が受けられません。健康保険に加入する際には、現在の健康状態や過去の疾患について告知しなければなりませんが、これは住宅ローンに付随する団信も同じです。

とはいえ、健康状態に不安があるからといって、すぐさま住宅ローンを諦める必要はありません。そこで今回のブログでは、団信加入に不安がある場合の対処法について解説します。

住宅ローンの審査は、大きく分けて3項目

住宅ローンの審査は、大きく以下の3項目に分けられます。

  • 借りる方の返済能力
  • 借りる方の健康状態
  • 購入する物件の評価

このうち「返済能力」ばかりが注目されがちです。でも実は、「借りる方の健康状態」がネックになるケースは少なくありません。

「持病がある」

「かつて大きな病気をした」

なんて方は要注意です。団体信用生命保険に加入できないことが、否決の要因になったりします。

では、持病がある方は住宅ローンが組めないのでしょうか?

そんなことはありません。

団体信用生命保険に加入できなくても組めるローンがありますし、持病のある方でも団信に加入できるケースもあります。

「持病があるから住宅ローンが組めない」とお考えの方は、しっかり読んで対策を講じてください。

団体信用生命保険とは

そもそも団体信用生命保険とは、住宅ローンの返済中に契約者が万一亡くなったり、高度障害になった場合に保険金が下りる仕組み。この場合、引受保険会社から銀行へ保険金が支払われることでローン残額はゼロとなり、以降のお支払いは必要ありません。

生命保険ですので、加入時には健康状態に関する告知が義務づけられています。持病があったり、過去に大きな病気をした、なんて方は要注意です。

健康状態に不安がある場合

団体信用生命保険がネックで住宅ローンの審査が通らない可能性があるのは

  • 持病があって定期的に通院している
  • 継続的にお薬を服用している
  • 大きな病気で手術をした

などのケースです。

健康状態に不安がある場合、その状態を正確に告知しなければなりません。

ちなみにこの審査をするのは銀行ではなく、あくまでも保険会社です。

通常、住宅ローンの事前審査の段階では、健康状態の審査は行いません

このため事前審査で承認を得て不動産の売買契約を結んだ後になって、本審査の段階で否決されるという事態が生じかねないのです。

不動産の売買契約をした後でも、「住宅ローンの承認が下りなければ白紙解約できる」旨の特約が設けてあれば問題はないですが、契約手続きに要した時間も手間も無駄になってしまいますし、契約書に貼付した印紙代だってもったいない。

このような事態を防ぐためにも、もし健康状態に不安があるのであれば、事前審査の段階で保険の審査も受けてしまいましょう。できるだけ不安要素をなくした上で不動産の契約を結んだ方がいいに決まっています。

事前に団信の審査を受けるのは簡単

不動産屋さんで事前審査を受けるなら「健康状態に不安があるので、団信の審査も受けておきたいです」と伝えてください。

金融機関から団信の告知書を取り寄せてくれるはずです。この場合、通常の事前審査よりも時間が掛かりますので、その点だけご注意を。

ネットや店頭などでご自身で住宅ローンの事前審査を受けた場合は、その金融機関に同様の旨を伝えて団信の審査を受けましょう。

団体信用生命保険の告知事項

Inside clean room hospital on morning

団体信用生命保険の告知事項は、いずれの金融機関もほぼ同じ。

  • 最近3カ月以内に医師の治療を受けたことがあるか。
  • 過去3年以内に特定の疾患で手術を受けた、または2週間以上に医師の治療や投薬を受けたことがあるか。
  • 手・足の欠損または機能障害があるか。背骨(脊柱)・視力・聴力・言語・そしゃく機能に障害があるか。

「あり」の項目があった場合、正確な病名や治療、服用している薬などを申告する仕組みです。

「自己申告か。なら黙っていたら大丈夫」と思ったあなた!

告知義務違反は保険金が支払われず、重大なトラブルに発展する恐れがあります。告知は正確に、が大原則です。

単なる風邪や虫歯などでお医者さんに掛かったくらいでは大丈夫。対象とならない軽微な疾病は「告知しなくてもいいですよ」と記載されています。

団体信用生命保険に加入できなかった場合

団信の審査で保険契約がNGだった場合、取るべき方法は二つです。

  • 加入条件が緩和された「ワイド団信」を選択する。
  • 団信不加入で契約できる住宅ローン商品を選択する。

この、いずれか2つの方法を試してみましょう。

ワイド団信

一つ目の選択肢、加入条件が緩和された「ワイド団信」です。

通常の団体信用生命保険に加入できなかった場合でも、こちらであれば加入できるケースは少なくないです。

その分保険料は高くなります。通常の金利に0.3%程度上乗せになるのが一般的です。

とはいえ、長期間に渡って支払うローンですから、リスクヘッジとして団体信用生命保険はぜひ加入しておきたいもの。ワイド団信で契約が可能であれば、迷わずこれを選択することをお勧めします。

ちなみにこのワイド団信。

取り扱いのない金融機関もあるので注意が必要です。

メガバンクでは三菱UFJ銀行やみずほ銀行、りそな銀行。ネット系ではイオン銀行やソニー銀行が扱っています。

ご自身で事前審査を受ける場合には、HPなどで取り扱いの有無を確認しておきましょう。

団体信用生命保険に加入しない

ワイド団信でも保険契約ができない場合、団信不加入で借りられる住宅ローンを選択することになります。

とはいえ選択肢は多くはないので、限られた候補の中から選ぶ以外にはありません。

第一候補はフラット35

第一の候補はフラット35。

こちらは団体信用生命保険に加入できなくても融資を受けることができる住宅ローンの代表格です。

フラット35の場合は、そもそも団信の加入が必須ではなく任意。金利に0.2%上乗せすることで「加入することができる」という仕組みです。

仮に「もう十分な生命保険に入っているから、団信まで付けなくても大丈夫」という方でも、団信不加入で融資を受けられます。

団信は「団体」という名の通り、スケールメリットを活かしたコストパフォーマンスの高い保険商品と言えますが、一点だけ難点があるとすれば「年齢によるリスクの多寡が考慮されない」こと。

つまり、一般的に健康を害するリスクの高い高齢な方も、それが低い若者も、同一の保険料で運用されています。

つまり、若年層にとってはちょっと不利な契約内容といえるでしょう。

まだ20代とか30代前半で、十分な生命保険や所得補償に入っている方でしたら、「団信を付保しない」という選択肢もアリです。

もちろんこれは万が一の時にも他の保険で十分な備えができている、という場合に限ります。

団信に加入しない場合、もしご契約者が亡くなったとしてもローンの残債が残ります。

残されたご家族がその家に住み続けていけるよう、できるだけの対策は講じておきたいものですね。

このフラット35は、住宅金融支援機構が運営する非常に優れた住宅ローン商品といえます。

審査に対する不安の要因が「健康状態」であるならば、候補の一つとして迷わずフラット35の審査は受けておきましょう。

連帯保証人を立てる

もう一つ、契約者本人以外に連帯保証人を立てることで、団信に加入できなくても融資を受けられるケースがあります。

配偶者など、法定相続人が連帯保証人となるのが一般的。仮にご契約者が亡くなった場合、連帯保証人が残債を引き継ぐことになります。

法定相続人とは、民法で定められた相続人のこと。

亡くなった方に配偶者がいれば配偶者。それ以外の方は血筋を基本として、順位が定められています。第1順位は子供、第2順位は父母、第3順位は兄弟姉妹です。

団信に加入できない場合は万が一契約者がお亡くなりになっても残債が消えませんから、「その後の支払いを担保するために連帯保証人を決めておく」というのがこの形です。

配偶者などがこれに該当するケースが多いでしょうか、こちらも「万が一の時の補償がない」ことをしっかりと認識しておくことが重要です。

この仕組みを採用している銀行はあまり多くなく、一部の金融機関に限られます。

「ワイド団信」を扱っているメガバンクの中に「法定相続人が連帯保証人になる仕組み」もオプションとして用意されているところがあるので、健康状態に不安がある方の選択肢の一つとして候補に入れても良いかと思います。

単純な団信不加入と連帯保証人の違い

フラット35を利用する場合でも連帯保証人を立てて契約する場合でも、いずれも団体信用生命保険に加入していない状態であることは同じです。

ですがこれ、一点だけ大きな違いがありので、最後にこの点を説明します。

団信不加入で契約者が亡くなった場合、いずれのケースでも住宅ローンの残額が残ります。

この際、連帯保証人を立てて契約した場合にはそのまま連帯保証人に残債の支払い義務が生じます。

「契約者が払えなくなったら連帯保証人が代わりに払う」という契約内容ですからね。

一方、フラット35のように単純に団体信用生命保険に入っていないだけの場合は、すぐさま誰かに支払い義務が生じるわけではありません。

契約者が亡くなって残した家も、その住宅ローンの債務も、どちらも相続財産とみなされるからです。

ですから、相続人が家とともに住宅ローンの残債を相続して初めて、その方に支払いの義務が生じます。

一見同じに見えますが、実は結構違います。

これは余談になりますが、相続は資産(プラス)も負債(マイナス)もまとめて引き継ぐ「単純承認」、資産の範囲内で負債も引き継ぐ「限定承認」、すべて引き継がない「相続放棄」の三つの方法が選択できます。

住宅とローンを残して亡くなった方の相続財産のうち、「家の価値よりも残債の方が高かった場合、これを放棄する」という選択肢がある、ということです。

連帯保証人の場合は「契約者が支払い不能になった」ことをもって保証人に支払い義務が発生しますので、こういった選択はできません。その違いがあることを覚えておきましょう。

健康状態に不安がある場合の審査

健康状態に不安があり、団体信用生命保険の契約ができるか分からない場合には、それなりの対応策が必要です。

  • 事前審査の段階で団信の告知も同時に行う
  • 通常の団信が厳しければ「ワイド団信」を利用
  • フラット35の審査も受けておく
  • 連帯保証人による契約の可否を確認

以上の4項目を念頭に、住宅ローンの審査を進めていきましょう。

最も重要なのは不動産売買契約の前にいずれの手続きも行うことです。

ローンの契約の可否をより正確に審査したうえで、売買契約に臨みましょう。