住まいの購入を検討すると、住宅ローンに関する情報も気になってくるのではないでしょうか?
WEB上には、数多の住宅ローンの情報が溢れています。「住宅ローン」で検索すると、住宅ローンを取り扱う金融機関より先に、むしろ住宅ローンの比較サイトやブログなどがヒットするくらい。
確かにこれらの比較サイトやブログは、ネットサーフィンしながら容易に情報収集ができて、さらにはパソコンやスマホで簡単にローンの相談や事前審査までもができるシステムが導入されており、非常に便利!
と思いがちではありますが、実は使い方を間違えるとデメリットがとても大きい―という一面があります。
いきなり「事前審査」のバナーをポチっとする前に、しっかりとメリット・デメリットを認識しておきましょう。
「お家が欲しいなあ」と思ったら、みなさんはまずは何をされますか?
「そうだ。不動産屋行こう」
そう思い立っていきなり不動産屋に足を運ぶ方は、今となっては少数派ではないしょうか?まずはネットで情報収集、というアクションを起こされる方が多いのではないかと思います。
最近はネットでも多くの情報を集めることができるようになったことで、不動産屋に行かなくともある程度の知識を得ることができます。
スーモやホームズといった不動産情報ポータルサイトでの物件情報の収集はもちろん、住宅ローンなどについても、「まずは自分で調べてから不動産屋に問い合わせをする」という方も少し前に比べてとても多くなってきた、という印象を受けます。
一口に「不動産屋」と言っても、実はその業態はさまざま。
自社の分譲する物件だけを売っている会社もあれば、中古戸建や土地などの仲介を専門にしているところもある。もちろん賃貸をメインに取り扱っているお店もある。
それによって、住宅ローンに対する力の入れ方も全く異なります。
ですから、「不動産屋さんに相談する前に、ある程度の知識を入れておこう」というアクションそのものは間違っていません。
新築マンションの販売などでは、「提携銀行」と称する1~2行から選択するだけ、なんてこともありますからね。
住宅ローン比較サイト・一括審査サイトとは?
住宅ローンの比較サイト・一括審査サイトとは、複数の金融機関の住宅ローンの金利や取り扱い条件などを一覧で掲載し、利用者がご自身の年収や勤め先、借入希望金額などの情報を入力することで一度に複数の審査を受けられる仕組みのWEBサイトです。
金融機関自体が運営しているのではなく、第三者が広告収入で運営しているケースが一般的といえるでしょう。
住宅ローンの比較サイトや一括審査を使って良い方
住宅ローンの比較サイトや一括審査を使って良い方には、条件があります。
1.会社員または公務員、団体職員など、法人にお勤めの方
2.勤続年数が1年以上
3.借入額が年収の7倍以下
4.クレジットカードなどの支払い遅延がない
基本的には、この4項目をすべてクリアしていること。特に4.は要注意!
もし「引き落としに間に合わなかった!」なんて記憶があるようでしたら、まずは個人信用情報を確認しましょう。
一方で、クリアしていない項目が1~3であれば、利用価値があります。
最後までしっかり読んで、上手に使ってみてください。
比較の際に見るべきポイント
では、複数の各金融機関の住宅ローンの特徴を比較する際に、どこに着目すればいいんでしょう。
「あ!金利が安い!」と思ったけど、「申込から融資までの期間が長すぎて使えなかった」なんてことも。
比較すべきポイントは、以下の5点。
1.金利
2.保証料
3.事務手数料
4.団体信用生命保険
5.申込から融資実行までの日数
金利
もちろん安い方がいいに越したことはないですが、大きく書かれた最低金利だけを見たらダメ。
その金利が適用される条件が厳しいケースも散見されます。
例えば、「融資金額が物件価格の8割未満の場合にこの金利が適用されます」なんていうケースです。
フラット35を例に挙げれば、融資金額が 物件価格の9割以下の場合と9割を超える場合では適用金利が異なります。
物件価格の9割以下 1.82%
物件価格の9割超 1.93%
※ともに借入期間35年、機構団信加入、2024年4月現在。
購入する物件の価格と、それに対する借入の割合に応じて適用金利が変わるのは比較的多く採用されている仕組みの一つ。表示されている最低金利は低いものの、「物件価格と諸費用を合わせた全額を借りたい」なんて場合には、その金利が適用されないケースも少なくありません。
あくまでも「ご自身の借り方で適用される金利」を確認しましょう。
保証料
保証料とは、融資をする金融機関が「借りた本人が払えなくなって貸し倒れが発生した」というリスクを回避するために、連帯保証人の代わりの役割をしてもらう保証会社に支払う料金のこと。
最近では、保証会社を使わないプロパーローンも増えてきています。いずれにせよ、次に記す事務手数料と合算して比較すると良いでしょう。
融資事務手数料
銀行や保証会社などに支払う手数料。別途保証料が掛かる金融機関でしたら5万円程度が一般的です。
ですが、保証料無料を謳う住宅ローンでは、これが何十万にも及ぶケースも少なくない。事務手数料という名目に変わっただけで、結果的に支払う金額には差は出ません。
繰り返しになりますが、保証料と事務手数料を合算してイニシャルコストを比較しましょう。
団体信用生命保険
「団信(だんしん)」という略称で呼ばれる団体信用生命保険も、金融機関が差別化を図っているポイントの一つです。
「がんと診断されたら」
「三大疾病と診断されたら」
「所定の傷病が一定期間続いたら」
など、手厚い補償が少しの金利上乗せで付保できる商品も数多く提供されています。
特に、ある程度のご年齢以上の方はメリットが大きいです。一般の保険商品は年齢が上がればそれに応じて保険料も上がるケースが大半だからです。
30代後半以上の方は、このような付加的な保険を検討しても良いと思います。
申込から融資実行までの日数
通常、住宅ローンの融資申し込みは購入する不動産の売買契約を締結した後に行います。売買契約そのものも審査の対象になるからです。
通常、住宅ローンの本申し込みから審査の承認までは1週間から2週間程度。その後に金銭消費貸借契約(住宅ローンの契約)を結び、融資実行という流れです。
本申し込みから融資実行(つまり決済・引渡し)までは1カ月くらいを要します。しかし、金融機関によってはこれが「最短で1カ月半」なんてケースもあり得るのです。
不動産そのものの売買契約の際に、引き渡しや融資承認までの期日を設定しますが、極端に時間が掛かる金融機関では、それに間に合わなくなってしまいます。
新築戸建ての完成物件などを購入する際には特に注意が必要です。
売主さん側は引渡しまでに何ら時間を要しない場合や「できるだけ早く現金化したい」とお考えの場合、契約から決済・引き渡しまでに長い期間を設定すること自体が売主さんにとってのデメリットとなりかねません。
例えば売主さんが3月決算の不動産屋さんだったとしましょう。
「3月末までに引き渡すのが絶対条件。じゃなければ売れません」という風に考えても全く不思議はありません。この融資までに要する日数は、不動産取引に精通しているわけではない一般の方が見落としがちなポイントです。
「本申し込みから融資実行までが最短何日か」という点も、忘れずに確認しておきましょう。
「住宅ローン比較サイト」利用の際の注意点
WEB上の住宅ローンの情報や比較サイトを利用する際には、忘れてはならない注意点が存在します。便利な反面、使い方を間違えるとデメリットがとても大きいことを覚えておきましょう。
その一例が、掲載されている金融機関の偏りです。
ネット上の情報はメガバンクやネット銀行、それらが扱うフラット35の情報に偏りがちな傾向が顕著で、「地元の地銀ならもっと有利な住宅ローンが組めるのに・・・」というケースも少なくありません。
地銀や信金、JAなどは、「全国どこでも利用できるわけではない」という性質ゆえ、インターネット上のサイトなどで取り上げられにくいのですが、金利や団信などが魅力的な商品というのも多数存在します。
実際、ネットなどでかなり情報収集をされてから不動産屋に足を運んだ方でも、結果的に地元の不動産屋さんが紹介した地銀や信金などの住宅ローンを選んだというケースも少なくないでしょう。
また、「○○銀行の金利が安い!」という情報の裏には、例えば「金利が安いのは半年だけ。半年経ったらいきなり跳ね上がる」というような仕組みも存在しますし、そういうデメリットを分かりやすく説明しているサイトやブログは皆無といっても過言ではないくらいです。
申込先は3つくらいまで
申込先は3つくらいまでに抑えておいた方が無難です。もしかしたらこの後訪れる不動産屋さんで、より好条件の金融機関を紹介される可能性もありますから。
その時に「すでに10行の事前審査を受けました」なんてことになると、それ自体が審査のマイナス材料になる可能性も否定できません。
メガバンク・ネットバンク・地方銀行の中から2つ、それとフラット35なんていう組み合わせがオススメです。
条件をクリアできていないときの注意
先に挙げた1~4の項目すべてをクリアしていない場合は、次のポイントを踏まえて申し込んでみましょう。
1.「会社員または公務員、団体職員など、法人にお勤めの方」をクリアしていない。
自営の方であれば、3年以上の営業実績があればチャレンジする価値が高いです。
契約社員やパート・アルバイトという雇用形態なら、フラット35に限定して申し込みをしましょう。
2.「勤続年数が1年以上」をクリアしていない。
こちらも契約社員やパート・アルバイトという雇用形態の方と同様、フラット35に限定して申し込みをしましょう。
3.「借入額が年収の7倍以下」をクリアしていない。
7倍の額を超えるお借入れでは、審査のハードルがぐっと上がります。
自己資金を用意するか、物件を変更することなどで、借入額を抑えることを検討しましょう。
4.「クレジットカードなどの支払い遅延がない」をクリアしていない。
ダメです。一括審査には触ってはいけません。
まずはご自身の信用情報を取り寄せて、どのような情報が記載されているかを確認してみましょう。Aマークが3個以上あったら、押し出されるのを待った方が無難です。
むしろご自身での情報収集や審査申し込みに精を出すよりも、「住宅ローンに強い!」を売りにしている不動産屋さんに相談しましょう。
「審査が甘い」「通りやすい」という文言に注意
住宅ローン情報サイトを利用する際に最も注意したいのが、「審査が甘い」「通りやすい」などの文言で審査申し込みに誘導するケースです。
サイトの管理人自身が住宅ローン商品に関する知識が十分ではなく、「契約社員でも申し込める」といった断片的な情報をもとに、安易にこのような説明をしているほか、広告収入のために審査に誘導することだけが目的で、「実行した方が、実際に住宅ローンを組めなくなろうがお構いなし」と考えているサイトすら少なからず存在します。
これは本当に危険です。
「過去に携帯電話の料金やクレジットカードを延滞したことがあって、特に審査に不安を抱えている」というような方がいたとしたら、「審査に通りやすい」という文言は甘美な響きに聞こえるかもしれません。
さらには、「不動産屋にその話をしたくないなぁ」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
ですが、そこで安易にネット上の「事前審査」「仮審査」をクリックすることは、あなたの過去のネガティブな信用情報(延滞したという事実)をせっせと金融機関にバラまく行為に他なりません。
絶対にNGです。
ですが、それを教えてくれるサイトやブログって、あんまり無いのが実情です。
それどころか、ひどいものになると「一度にたくさんの事前審査を受ければ、審査に通過する確率が上がる」とまで記載しています。先ほど挙げた、アフィリエイト目的の極端な例ですね。
断言できます。
住宅ローンの審査は確率論ではありません。
一括審査・ローン比較サイトは、使い方さえ間違えなければとても有益
もちろん、これらの住宅ローンに関するブログや比較サイト自体を否定するものではありません。有益な情報を提供してくれるサイトも数多くあります。
ただその中に、デメリットしかもたらさない粗悪なサイトが紛れ込んでいることも事実です。そして数多の情報の真偽を見極めるのは、よほど住宅ローンに精通していない限りは難しいでしょう。
ネットから得た情報は、あくまでも「専門の方に相談するための予備知識」だと知っておいてください。
「年収が低いから」
「契約社員だから」
「過去に延滞しているから」
そんなことでマイホームの夢をあきらめて欲しくはないですし、かと言って、どこの誰が作ったかも分からないブログに背中を押されて「事前審査」をクリックすることは、ご本人に不利な状況をつくるリスクをはらんでいる、そういうことも知ってほしい。
今日のブログは、そんな思いからまとめたものです。
投稿者プロフィール
- 千葉県松戸市の行政書士です。